近年、がんの新しい診断・治療法の一つとして光線力学診療という概念が確立されつつあります。がん患者がアミノレブリン酸を服用すると腫瘍部位にポルフィリンといわれる物質が蓄積します。光線力学診療はそのポルフィリンを使ったがんの診断・治療法です。
さらに、血液や尿中のポルフィリンは被験者ががんを患っている可能性を示唆する腫瘍マーカーとしての可能性が示唆されつつあります。これは光線力学スクリーニングと名付けられ、光線力学診療の新たな展開として期待されています。
本講演ではこれらの新しい光線力学診療について概観してゆきます。
泌尿科領域のがんに対しては、従来より内視鏡手術、腹腔鏡手術、ロボット手術などの身体への負担が小さい低侵襲手術が積極的に行われてきました。これらの低侵襲手術に光線力学診断を併用することによって、がん病巣をより正確に診断し、確実かつ無駄の少ない病巣切除を行い、がんの治療成績に加え、機能的な成績をも改善しようとする取り組みが、近年盛んに試みられています。
本講演では、泌尿器科領域のがんに対する光線力学診断を採り上げ、その現状を分かり易く解説させていただこうと考えています。
年間約100万人があらたにがんと診断されるが、がん患者さんの少なくとも10%は転移性脳腫瘍を発症すると報告されています。がん患者さんは、化学療法などによってめまいやふらつきを訴えることが少なくなく、転移性脳腫瘍の診断が遅れることもあります。脳腫瘍を含む、脳の病気の診断と治療について、そして悪性脳腫瘍の“光”を用いた、蛍光診断や“レーザー”による悪性脳腫瘍に対する光線力学療法についても講演します。
休憩 (15:00~15:15)光の診断応用として、蛍光法によるがん患者でのセンチネルリンパ節の検索、そして光超音波診断法を用いる血管の同定について紹介します。乳がん患者の診療では、腋窩のリンパ節転移を検出するために蛍光色素が用いられております。また、光超音波診断法は、腫瘍の血管に特有の構造の解明などにより、がん診断の正診率の向上、がんに対する薬物治療の効果のモニタリング、さらに新しい医療法の開発に寄与すると考えられ、注目されています。