日本癌学会 吉田富三賞(吉田賞)

日本癌学会 吉田富三賞(吉田賞) 歴代受賞者

第26回 2017年(平成29年)

高橋 隆(名古屋大学大学院医学系研究科分子腫瘍学分野 教授)
高橋隆博士は、ヒト肺がんの発生機序の解明を目指した研究に一貫して取り組み、p53遺伝子やlet-7マイクロRNAなどの高頻度の異常や、肺腺がんのリネジ生存がん遺伝子としてのTTF-1とその標的遺伝子ROR1の重要性を世界に先駆けて報告し、これら分子機能の解明と臨床病態形成における重要性を明らかとした。博士が多岐に亘り展開してきた新規性と独自性に富んだ研究は、肺がんの分子病因の解明に大きく貢献した。

第25回 2016年(平成28年)

秋山 徹(東京大学分子細胞生物学研究所 教授)
秋山徹博士は、EGF受容体ファミリーのもつチロシンキナーゼ活性が細胞癌化に必須の役割を果たしていることを明らかにし、癌の分子標的薬開発への道を示した。また、Wnt/APCシグナルを制御する因子としてAsef、Axinなどを同定してその機能を解明し、癌化における重要性を分子・細胞・個体レベルで示した。さらに、癌細胞の造腫瘍性に必須な遺伝子群を網羅的に検索し、長鎖非コードRNAを含む重要な標的分子を見出し、新たな創薬への可能性を開いた。

第24回 2015年(平成27年)

野田 哲生(公益財団法人がん研究会がん研究所 所長)
野田博士は、先進的なマウス分子遺伝学手法を駆使し、多数のがん関連遺伝子の個体レベルでの機能を明らかにし、また、多くのヒト発がんモデルマウスの樹立に成功した。中でも、APC遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作製及びその解析は、がん抑制遺伝子の不活化による哺乳類個体での発がんを世界で初めて証明したもので、その意義は大きい。さらに、このような先進的マウス遺伝学手法の確立とその応用による発がんメカニズムの解明は、発がん研究のみならずがんの治療法開発にも大きく貢献した。

第23回 2014年(平成26年)

山本 雅(沖縄科学技術大学院大学 教授)
山本博士は、世界に先駆けてがん遺伝子erbBの腫瘍形成能を明らかにし、その遺伝子配列を決定した。この発見は、がん遺伝子erbBが成長因子受容体遺伝子に由来することを明らかにし、がんと正常が表裏にあることを示した。さらにc-erbB2を見いだし、その高発現がヒトがんの進展に関わることを見いだすなど、がんの分子標的治療開発への道を開いた。また、ErbB ファミリーやSrcファミリーチロシンキナーゼによる細胞シグナル伝達を解析し、それらが細胞の増殖や機能制御に重要であることを示した。

第22回 2013年(平成25年)

清木 元治(高知大学医学部付属病院 次世代医療創造推進センター 特任教授)
清木博士は、がん細胞が周囲組織に浸潤する際の鍵となる酵素として、膜型マトリックスメタロプロテアーゼMT1-MMPを発見し、MT1-MMPによるがん細胞表層での様々な基質タンパク質の切断による機能変換が、がんの増殖、浸潤、転移の制御に重要であることを明らかにした。 このことにより、がん細胞表層における"Pericellular Proteolysis"の重要性を明らかにする先駆的な研究で世界をリードした。

第21回 2012年(平成24年)

長田 重一(京都大学大学院医学研究科 分子生体統御学講座分子生物学 教授)
ヒトの体内では毎日数10億の細胞が死滅する。この細胞死の過程はアポトーシスと命名されていたが、その分子機構、生理作用は長い間不明であった。長田重一氏はアポトーシスを引き起こすサイトカインを発見し、細胞死の分子機構を解明した。ついで、死細胞がマクロファージによって貪食・分解される分子機構を解析し、細胞死や死細胞貪食の異常が、がんや自己免疫疾患などの病気をもたらすことを見いだした。

第20回 2011年(平成23年)

前田 浩(崇城大学薬学部/熊本大学名誉教授(医学))
微生物感染局所での宿主の応答としてキサンチンオキシダーゼやNADPH酸化酵素、さらにはNO合成酵素の活性化が起こり、スーパーオキサイドやNOなどラジカル分子が大量に生成し、細胞や核酸に傷害(変異など)を起こすことを初めて明らかにした。さらに、ネオカルチノスタチンの研究からスマンクスの創製という世界初の高分子型制癌剤を完成させ、高分子型薬剤が腫瘍局所の血管透過性の亢進により腫瘍部に選択的にデリバリーされることを見出した。その現象「EPR効果」は昨年は約8千件も引用されている。

第19回 2010年(平成22年)

廣橋 説雄慶應義塾大学 教授
廣橋説雄博士は、病理診断学を基盤にモノクローナル抗体や遺伝子解析など、最新の分子細胞科学的手法を用いてヒトがんの発生と浸潤・転移などの病態の解明に取り組み、肝がんの多段階・多中心発生の証明、ヒトがんにおける細胞間接着不活化の多様な機構の発見そして病理診断や血清診断に有用な腫瘍マーカーの開発など世界をリードする研究を進め、その成果が実際のがん臨床にも応用される顕著な業績を挙げた。

第18回 2009年(平成21年)

上田 龍三名古屋市立大学 腫瘍免疫内科学 教授
上田博士は、ケモカインレセプターであるCCR4が、難治性血液腫瘍である成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)等に強く発現しており、抗CCR4抗体の糖鎖を修飾することにより、強力な抗体依存性細胞障害活性と抗腫瘍効果が発現することを発見した。更に、がんに対する抗体療法としては本邦初となる、抗CCR4抗体を用いたCCR4陽性T細胞性腫瘍に対する臨床試験を展開することに成功した。

第17回 2008年(平成20年)

谷口 維紹東京大学大学院 医学系研究科 免疫学 教授
谷口維紹博士はb型インターフェロンやIL-2の遺伝子を世界に先駆けて単離し、発癌や免疫の制御に深く関与しているサイトカインの実体とその作用機構に関する分子レベルの研究の端緒を切り拓いた。また、サイトカインの遺伝子発現とシグナル伝達の研究を大きく進展させ、特にIRF転写因子ファミリーの発見を通して発癌抑制や免疫制御等におけるそれらの多彩な機能を明らかにする先駆的な研究を推進した。

第16回 2007年(平成19年)

高橋 利忠健康科学総合センター センター長/愛知県がんセンター 名誉総長
癌免疫療法の基礎と応用に関する研究
動物実験モデルを用いたがん抗体療法とワクチン療法の研究、ヒトメラノーマ等の腫瘍細胞表面抗原の血清学的研究、ヒト造血器腫瘍等に対するモノクローナル抗体の作成と自家骨髄移植療法への応用研究、ヒト血液細胞特異的マイナー移植抗原の同定と骨髄移植後の白血病再発例に対する免疫療法の応用研究、など数十年間にわたる日米両国におけるがん免疫療法の研究により、日本のがん免疫研究の牽引者として大いに貢献した。

第15回 2006年(平成18年)

下遠野 邦忠京都大学ウィルス研究所 がんウィルス研究部門 教授
C型肝炎ウィルス感染による肝がん発症の予防に関する研究
HCVのゲノム構造解析、タンパク質の構造、産生機構、ウィルスタンパク質の機能解明に加え、ウィルスゲノム複製に関わる細胞側の因子の解明などの研究に従事し、その過程でウィルス感染の検出に関する新しい知見、あるいはHCV感染を排除するための研究の発展に貢献した。

第14回 2005年(平成17年)

澁谷 正史東京大学医学系研究所 教授
藤浪肉腫ウィルスのがん遺伝子v-fpsを初めて単離リし、またヒト脳腫瘍におけるEGF受容体の質的異常を初めて明らかにするなど、癌研究全般で多くの優れた業績を挙げている。また、内皮細胞特異的な受容体キナーゼflt-1(VEGF受容体_1)を世界に先駆けて単離し、VEGF受容体群のシグナルの特徴とその血管新生・転移・腹水形成における重要性を示した。

第13回 2004年(平成16年)

鶴尾 隆東京大学 分子細胞生物学研究所 教授
長年に亘り抗癌剤耐性の研究を推進しカルシウム拮抗剤等に多剤耐性克服作用を発見した。またアポトーシス耐性の分野においても卓越した貢献をなし、耐性克服を中心とした分子標的治療法の国際的な研究と開発をリードしている。この発見は国内外で極めて高く評価されており、癌研究に多大なる貢献をなした。

第12回 2003年(平成15年)

伊藤 嘉明Institute of Molecular Cell Biology, Singapore
胃癌の発生に関わる主要ながん抑制遺伝子RUNX3を発見した。この発見は国内外で高く評価されており、癌研究に多大なる貢献をなした。
大木 操国立がんセンター研究所
急性骨髄性白血病の染色体転座の解析によりAML1等を発見し、また、AML1が造血細胞の分化増殖に重要な役割を果たしていることを明らかにするなど造血器腫瘍分野において輝かしい成果をあげた。

第11回 2002年(平成14年)

中村 祐輔東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター センター長
APCやp53関連遺伝子など多数のがんに係る遺伝子を発見してその機能を明らかにし、又、日本のゲノム科学の推進に多大なる貢献をなした。

第10回 2001年(平成13年)

関谷 剛男国立がんセンター研究所 元部長/医薬品副作用被害救済研究振興調査機構 研究顧問
微細なDNA異変を簡便に検出するSSCP法の発明により広く癌研究の発展に寄与し、又機関誌JJCRの編集に多大な貢献をした。

第9回 2000年(平成12年)

小林 博北海道大学 名誉教授/財団法人 札幌がんセミナー 理事長
腫瘍病理学特にがんの異物化研究において優れた業績を挙げ、又札幌がんセミナーの運営等を通して癌研究の発展に寄与した。

第8回 1999年(平成11年)

吉田 光昭萬有製薬(株)つくば研究所 所長
成人T細胞白血病の原因ウイルスHTLV-1の研究において優れた業績を挙げ、又広く癌研究の発展に寄与した。

第7回 1998年(平成10年)

黒木 登志夫昭和大学 腫瘍分子生物学研究所 所長
試験管内発癌研究及びシグナル伝達研究において多くの業績を挙げ、又優れた著作により人々の癌研究への理解を深めた。

第6回 1997年(平成9年)

橋本 嘉幸財団法人 佐々木研究所 所長
膀胱発癌の実験的研究及び免疫学、ことにモノクロナール抗体の医学・薬学への応用研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第5回 1996年(平成8年)

伊東 信行名古屋市立大学 学長
化学発癌研究、特に環境物質の発癌性同定の研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究に寄与した。

第4回 1995年(平成7年)

佐藤 春郎東北大学 名誉教授
吉田肉腫・腹水肝癌を用いたがん細胞の生物学研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第3回 1994年(平成6年)

豊島 久真男大阪府立成人病センター 総長
がんウイルスとがん遺伝子の研究において優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第2回 1993年(平成5年)

菅野 晴夫財団法人 癌研究会癌研究所 所長
ヒト癌の特性とその自然史の解明について優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。

第1回 1992年(平成4年)

杉村 隆国立がんセンター 名誉総長
癌の発生並びに本能の解明に優れた業績を挙げ、また広く癌研究の発展に寄与した。