日本癌学会 理事長あいさつ

理事長あいさつ

ご挨拶

日本癌学会理事長 佐谷 秀行

一般社団法人 日本癌学会
佐谷 秀行

 日本癌学会の目的は「癌研究の発達を図る(会則第2条)」ことであり、本学会はがんの基礎研究から橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)、臨床研究、公衆衛生・社会医学系などの幅広い領域の研究に関係する、様々な立場の個人・法人が集う組織です。

 本学会を主体として構成するのは、大学や研究機関、医療機関、企業においてがん研究やがん医療を行う研究者であり、現在、会員数は約15,000人を数えます。2003年より本学会は理事長制を導入し、廣橋説雄博士(2003-2008)、野田哲生博士(2009-2014)、宮園浩平博士(2015-2017)、中釜斉博士(2018-2020)の後を受けて、2021年より私、佐谷秀行が理事長に就任しました。

 日本癌学会では「学術総会の開催」と「学会機関誌Cancer Scienceの発行」という二つの活動が大きな柱となっています。その他、本学会では市民公開講座(年2回)やシンポジウムの開催、吉田富三賞・長與又郎賞をはじめとした各種学術賞の授与、若手研究者の会の開催など、幅広い活動を行っています。

 学術総会は年に一度、秋に開催されます。学術総会には例年約5,000名のアカデミア及び企業の研究者や学生、患者団体の方々などが参加し、2千数百題におよぶ発表がなされています。本学会は我が国でもいち早く「国際化」を重要なテーマと位置づけて推進して来ました。学術総会では、第66回大会(2007年)よりインターナショナルセッションとして、3日間の会期中に12のセッション枠を設け、アジア・オセアニアを中心に海外の数多くの研究者に参加して頂いてシンポジウムを運営するなど活発な活動を進めています。また米国癌学会(AACR)との交流は盛んであり、3年に1回の日米癌合同会議(ハワイ)の開催、お互い毎年開催される学術総会における共同セッション(JCA-AACRジョイントシンポジウム)の設定、特定の臓器のがんをテーマとするJCA-AACR special joint conferenceの開催など、多くの行事を共に運営してまいりました。

 Cancer Scienceは、1907年に山極勝三郎博士により創刊された世界で最も古いがん専門誌の一つである「癌」(GANN)を本学会が受け継いだものです。その後、GANNはJJCR(Japanese Journal of Cancer Research)と改名され、2005年からはCancer Scienceとして現在に至っています。2014年からはフルオープンアクセスジャーナルとなり、海外からのダウンロード数も急速に増えるなど発展を続けています。本誌のImpact Factor(IF)も安定的に高いレベルを維持しており、2019年のIFは4.890でした。本誌は宮園浩平編集長(Editor-in-Chief)のご尽力のもとで国際的にも高いレベルとの評価を得ており、名実共に国際学術誌となっています。今後も一層の展開を目指しているところです。

 がん研究は20世紀後半になって加速度的に進歩し、がんの本態を明らかにするような画期的な研究成果が次々に得られてきました。21世紀に入ってからはがんの分子標的治療薬が続々と開発され、特に2010年以降は、個々のがんのゲノム情報(ゲノム異常)に基づいた治療薬の開発が急速に展開しており、がん治療の面でも飛躍的な進歩が見られています。2018年度からは、日本においてもがんゲノム医療を担う中核拠点病院や連携病院等が整備され、ゲノム情報に基づいて個人毎に最適な医療を行うPrecision Medicineの時代が到来します。日本癌学会としても、今後のがんゲノム医療の強固たる科学的基盤を提供するという観点からも、基礎及びトランスレーショナル研究に一層精力的に取り組むとともに、それを担える人材の育成に力を尽くしたいと考えています。

 2020年は新型コロナウイルスの世界的流行により生活や仕事の制限や医療の逼迫が問題となり、がん研究や治療にも大きな影響が及んでいます。この全世界が経験している未曾有の惨事を乗り越えて、がんで苦しむ人々を救うために日本癌学会は国際的なリーダシップを発揮しつつ、海外の研究者との更なる協働関係の構築・強化を目指したいと思います。私たちは本学会の活動を通じて医学・生命科学の発展に貢献し、社会との連携のもとに新たながん予防法やがん診断・治療法の開発に今後も邁進する所存です。

 領域を超えて多くの方がご参加いただける学会を目指しますので、今後ともご支援のほど何卒よろしくお願いいたします。