禁煙治療標準手順書

喫煙のがんを始めとする健康に関する情報発信【参考文献5】

【参考文献5】

タイトル:Tobacco smoking and somatic mutations in human bronchial
     epithelium

著  者:Kenichi Yoshida et al.
雑誌名 :Nature 2020;578(7794):266-272
リンク :https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31996850/

【文献の紹介文】

この論文は、実際に人の気管支の細胞の遺伝子を調べ、遺伝子変異パターンと喫煙や加齢が関係があるかどうかを調べた研究報告です。
16人の被験者(子ども3人、非喫煙者4人、過去喫煙者6人、現在喫煙者3人)の気管支から採取した細胞一個一個について遺伝子変異の量と種類を全ゲノム解析で調べ、変異に影響する要因を分析しました。
その結果、年齢と喫煙が最も強く影響している事が判明しました。年齢に関しては、1歳年を取るごとに1細胞当たり22の変異が生じ、過去喫煙で1細胞当たり2,330の変異が、現在喫煙で1細胞当たり5,300の変異が生じると推定されました。ただし、同じ人の中にも変異の多い細胞と少ない細胞があり、過去喫煙者や現在喫煙者の細胞であっても、非喫煙者と同じ程度の変異しか生じていない「健康な細胞」が一定の割合でありました。この健康な細胞の量は、現在喫煙者より過去喫煙者で多い事が判明しました。
これらの結果は、喫煙者であっても正常細胞のストックがどこかにあり、禁煙することで異常細胞と入れ替わる可能性を示唆しています。

【紹介者コメント】

禁煙したいけど自分はもう遅いのではないかと躊躇している人も多いのではないでしょうか。疫学研究では60歳代でも禁煙の効果があることが示されています。今回ご紹介した研究は、その生物学的なメカニズムをゲノムレベルで明らかにしたものです。この研究に参加した喫煙者の中には、1日3箱を49年吸い続けた人も含まれていました。喫煙者であっても正常細胞のストックがあり、禁煙でそれが復活する可能性が示されました。ヘビースモーカーであっても、高齢スモーカーであっても、禁煙するのに遅すぎることはない、そんな勇気をくれる研究です。

担当委員: 片野田 耕太 (国立がん研究センター がん対策情報センター)