禁煙治療標準手順書

禁煙治療標準手順書

PDF禁煙治療標準手順書【改訂第6版】
ダウンロード(PDF:約1.47MB)

本手順書は、2012年4月に作成した第5版の内容に、2014年4月1日現在までの変更点を反映し作成したものです。 今後も変更が起こりうるかもしれませんので、厚生労働省の通知などの内容を改めて確認して下さい。

PDF形式データの閲覧には、Adobe Readerがインストールされている必要があります。
お持ちでない方は無償でダウンロードすることができますので、下のアイコンをクリックしてください。 Adobe Reader

≪ニコチン依存症管理料の改正についてのお知らせ≫

2016年2月10日の中央社会保険医療協議会の答申を受けてニコチン依存症管理料の改正が決定しました。追って手順書の修正版を公開する予定ですが、取り急ぎ、改正点のみお知らせします。

PDF ニコチン依存症管理料の改正点はこちら

詳細については正式な厚労省告示や通知文をご確認くださいますようお願いいたします。
【厚労省からの関連告示や通知文書】
・保発0304第10号「平成28年度診療報酬改定について」
・平成28年厚生労働省告示第54号「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件」
・保医発0304第2号「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」
・保医発0304第3号「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」

2016年4月1日

Ⅰ. はじめに

喫煙はわが国のような先進国において疾病や死亡の原因の中で防ぐことの出来る単一で最大のものであり、禁煙は今日最も確実にかつ短期的に大量の重篤な疾病や死亡を劇的に減らすことのできる方法です。すなわち、禁煙推進は喫煙者・非喫煙者の健康の維持と莫大な保険財政の節約になり、社会全体の健康増進に寄与する最大のものと言っても過言ではありません。

ところで、喫煙習慣の本質はニコチン依存症であり、本人の意志の力だけで長期間の禁煙ができる喫煙者はごくわずかであることが明らかになっています。欧米ではニコチン依存症を「再発しやすいが、繰り返し治療することにより完治しうる慢性疾患」と捉え、禁煙治療に対する保険給付などの制度を導入して、多くの喫煙者が禁煙治療を受けることができるよう社会環境の整備を進めています。2005年2月27日に発効したWHO「たばこ規制枠組条約」(FCTC)においても、「締約国は、たばこの使用の中止及びたばこへの依存の適切な治療を促進するため、自国の事情及び優先事項を考慮に入れて科学的証拠及び最良の実例に基づく適当な、包括的及び総合的な指針を作成し及び普及させ、並びに効果的な措置をとること」(同条約第14条)が求められています。

禁煙治療の有効性ならびに経済効率性については十分な科学的証拠があり、数ある保健医療サービスの中でも費用対効果に特に優れていることがわかっています。わが国においても、医療や健診等の場での禁煙治療の方法論が開発され、確立しつつありますが、その取り組みは一部の医療関係者にとどまっているのが現状です。

これまでわが国では、禁煙治療が自費で行われてきました。しかし2005年6月に、日本循環器学会が第3次対がん総合戦略研究班の協力を得て、厚生労働省保険局医療課に対して禁煙治療への医療保険の適用を求めるための医療技術評価希望書を提出したほか、日本気管食道科学会が日本医師会長宛に禁煙治療に対する保険給付の要望書を提出しました。さらに、日本循環器学会や日本肺癌学会などの禁煙に取り組む9学会(前記2学会のほか、日本呼吸器学会、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本心臓病学会、日本口腔衛生学会、日本口腔外科学会、日本公衆衛生学会)が厚生労働省保険局医療課長に対して禁煙治療の保険適用の要望書を提出しました。これらの動きを受けて厚生労働省は、2006年度の診療報酬の改定にむけて、2005年11月9日の中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会にニコチン依存症に対する禁煙治療の保険適用を提案しました。その結果、2006年2月15日の中央社会保険医療協議会総会において、「ニコチン依存症管理料」が新設され、禁煙治療に対する保険適用が2006年度より開始されることになりました。

本手順書は、このような禁煙治療に対する保険適用の動きを踏まえて、2005年6月に厚生労働省保険局医療課に提出された医療技術評価希望書の内容に準拠して禁煙治療の手順と方法を具体的に解説したものです。さらに、2006年2月15日の中央社会保険医療協議会総会での禁煙治療の保険適用の決定においてつけ加えられた要件を受け、対象患者の条件を一部追記しました。この手順書の作成にあたっては、まず第3次対がん総合戦略研究班が作成した原案を日本循環器学会禁煙推進委員会、日本肺癌学会禁煙推進小委員会、日本癌学会喫煙対策委員会で検討を行いました。次に、各委員会で出された意見をもとに同研究班が手順書の最終案を完成し、同3学会で承認ならびに公表することとしました。

この手順書の第1版を2006年3月29日公表してから、2006年5月24日に中央社会保険医療協議会総会においてニコチンパッチの薬価収載が決定しました。そこで、同年6月1日付けの薬価基準の一部改正に関する厚生労働省告示第381号、厚生労働省保険局医療課長通知(保医発第0601001号)を受けて、本手順書の内容を一部修正しました。また、2006年8月4日付けの厚生労働省保険局医療課の事務連絡「ニコチン依存症管理料の施設基準に係る届出について」を受けて、同施設基準に規定する呼気一酸化炭素濃度測定器は薬事法により医療機器として承認を受けているものでなければならないことについて記述を追加しました。さらに、診療現場での混乱を避けるため、2006年3月6日付けの厚生労働省保険局長通知(保発第0306012号)に基づき、初回診察後のスケジュールを禁煙開始日からの起算ではなく、初回診察日からの起算に変更し、本手順書の内容を一部修正しました(第2版、2007年1月25日)。

2008年1月25日には、新しい禁煙補助薬バレニクリンが承認され、同年3月の中央社会保険医療協議会総会においてバレニクリンの薬価収載が決定しました。また、同年4月の薬価収載に伴う留意事項通知により、ニコチン依存症管理料を算定する禁煙治療を行っている患者が、治療途中で入院し、引き続き禁煙治療を実施した場合、その治療に要した薬剤料を算定することができることになりました。そこで、第2版の手順書を一部修正し、第3版としました(第3版、2008年4月18日)。

2008年5月にニコチンパッチがOTC化されたこと、2009年5月に禁煙補助薬であるバレニクリンの新薬による投薬期間制限が解除されたことを受けて一部手順書の内容を修正し、第4版として公表することにしました。また、本手順書は日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会の3学会から公表してきましたが、新たに日本呼吸器学会が加わることになりました(第4版、2010年4月1日)。

2011年7月に禁煙補助薬であるバレニクリンについて、意識障害に係る添付文書の重要な改訂が行われたことを受け、第4版の手順書を一部修正し、第5版としました(第5版、2012年4月2日)。

この度、2014年3月の中央社会保険医療協議会総会において診療報酬の改定が行われたことや、禁煙補助薬の有効性に関するコクランレビューの最新データの発表を受け、第5版を一部修正し、第6版としました。

今後、WHO「たばこ規制枠組条約」のもとで、タバコ価格・税の引き上げや喫煙場所の制限などのタバコ規制が推進され、それに伴って禁煙希望者が増加すると予想されます。本手順書が多くの臨床現場で活用され、日常診療の場での禁煙治療が効果的に推進されることを期待しています。

2014年4月

日本循環器学会
理事長 永井 良三
日本肺癌学会
理事長 中西 洋一
日本癌学会
理事長 野田 哲生
日本呼吸器学会
理事長 西村正治