日本癌学会からのお知らせ

日本癌学会「大阪宣言2018」

日本癌学会は、第77回日本癌学会学術総会特別企画で、「持続可能な最善のがん医療を実現するための医療費制度とは?」と題して、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会のがん関連学会の各理事長による3題の基調講演に加え、学会、大学、製薬企業、一般病院、行政、患者団体、メディア関係からの代表10 名の討論者、及び特別発言者としてがん研究会有明病院の山口俊晴名誉院長に参加をいただき、標題に掲げるテーマで活発な議論を行った。その内容を踏まえ、我が国における最善のがん医療を持続的に提供できる体制構築に向けた国家的戦略の重要性と、そのための緊急かつ継続的な議論の必要性について、本癌学会「大阪宣言2018」として広く社会に公表し、関係者一同この基本方針に沿って努力することを宣言する。

◆ 宣言内容 ◆

日本の人口は減少傾向にあるが、人口に占める高齢者の割合は増加を続けており、がん患者も当面は増加することが想定されている。ヒトゲノムの解明、新薬、新規治療法の開発により、がんの治療成績は着実に向上しているが、これらの実用化に伴い、がん医療のための医療費も着実に増加している。
このような社会的背景の中で持続可能ながん医療を支えていくには、我が国のがん医療の研究開発、提供、受給の現状において多くの課題が存在しており、課題解決への議論に向けた国民的な合意が求められる。

(1) 研究開発
  • 近年、研究費の減額・削減が続いていることに加え、研究者の任期制雇用が拡大している。研究者が安心して研究に取り組める環境が不十分であり、将来のがん医療・がん研究を担うための人材育成への配慮が不可欠である
  • 実用化等の短期的視点が重視されるあまり、長期的視点に基づく計画がおろそかになりがちであり、国家レベルで戦略的に取り組む必要がある
  • グローバルな開発競争への取り組みが十分とは言えない
(2) がん医療の提供
  • 均てん化と集約化のバランスが最適化されているとは言えず、拠点病院を中心とした初期治療から一般病院での緩和まで全治療経過を含めたネットワーク化など新しい枠組みの検討が求められる
  • 治療成績を集積・評価して可視化できる仕組みや治療対象の層別化が不十分であり、ゲノム医療の普及等による適正な薬剤投与や副作用軽減への取組みが急務である
  • 科学的根拠のない治療等の不適切な治療などの必要不可欠な情報が、がん患者に正確かつ十分に提供されているとは言えず、適切な情報提供への対応が求められる
(3) がん医療の受給
  • 一般医療も含めた医療費配分の優先順位に関する議論が求められる
  • 国民皆保険を維持するために、先進医療などの評価療養の活用、収入や治療効果に応じた負担割合の設定など、これまでにない飛躍的な発想の転換が必要である

その他、がん予防やがん患者の社会との共生についての認識も国民に十分に共有されているとは言えない。これらの諸問題についての議論を通じて、持続可能な最善のがん医療を実現するための医療費制度についての国民的な合意形成を図っていく。

2018年9月27日

日本癌学会 理事長:中釜 斉
第77回日本癌学会学術総会 学術会長:森 正樹